醸造家のいない委託醸造会社はクラフトなのか? | ベルギービール通販の大月酒店が過去にfacebookに掲載したコラムをご紹介致します。

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クラフトビールの現状 1

「醸造家のいない委託醸造会社はクラフトなのか?」

現在、ベルギーの醸造家の間で議論になっていることを一つご紹介致します。現代ビールシーンにおいて非常に大きな問題だと思われます。
”醸造家のいない委託醸造会社はクラフトなのか?”(※注意しなければいけないのは、「醸造家はいるけれど、設備を持っていないこと」と「醸造家がいなくて全て委託醸造をしていること」は全く違うということです。)
例えば、ミッケラーは元々醸造家チームであり、プルーフ醸造所を使ってビールを作っています。これは会社に醸造家が在籍しているので、今回の議論には当てはまりません。 一人も醸造家がいないのに、とある醸造所にレシピから製造まで全て丸投げし、出来上がったものをオリジナルラベルでその会社が独自作ったように見せて販売していることを問題視しているのです。
グラゼントールン醸造所のジェフさんもサインしている宣言です。是非この問題について考えてみて下さい。次回以降、内容を詳しくご紹介致します。 原文はこちら » 

ここからは本文を要約していきます。
「ベルギーの醸造家たちが警鐘を鳴らす」
我々国民に残された宝の一つであると思われるベルギービールが今聞きに瀕しています。 数々のビール事業が、純粋に商業的であろうと思われてしまい、その名声が落ちようとしているのです。
これから「真っ当な醸造家」とは反対の「似非醸造家」について話をしていこうと思います。 それはマーケティングありきの会社で、自分たちではビール醸造を一切行わないでビールを販売してます。 実際、そのビールは全く独立した存在の(その会社が所有していない)醸造所の人たちによって作られています。 オーナーは実際に我々と同様、醸造家とみなされていて、そういう小数の委託醸造会社がベルギーでのビール産業を単一化しているのです。

「偽物が普通になる」
近頃家や外で飲むものとしてのビールについて世間の意識が高まっており、おおよそ15日に一軒新しく醸造所(※正確に言えば、醸造所と名乗る会社)が開業しています。 ざっと計算すると、約75%は名前だけの醸造所で自分たちで実際の醸造は一切していません。 ビール醸造に必要な機材を所有しているところは、当然ながら一軒もないのです。
殆どの場合、名前だけ「醸造所」としている会社のビジネスは醸造家(ビール職人)ではなく、ビール醸造の経験・訓練もしていない人が経営・運営しています。 そういう企業の特徴は幾つかあるけれど、まず最初に目に付くのは「webサイト」です。 驚くようなことでもないのですが、その企業はソーシャルメディアやあらゆるネットワークに精通していて、語ることがそれっぽく広まっていきます。
また、こんなケースもあります。 似非醸造家は実際に販売しているビールは委託先の職人に作ってもらったものですが、ご家庭の鍋サイズで作ったような、ごくごく僅かの量の手作りビール(※これは実際には一切販売しない)をテレビに映してもらって手作り感をアピールする。 他にも消費者にアピールの為に、ビールを作るのだと思われる機材を一式購入したりもするのです。 まあ、それを使って作れると言えば作れるのだろうけれど、実際のところは一切稼動していません。 そういう企業の販売するものはほぼ100%「社員の醸造家でもない余所の誰かによって、その企業が所有していないどこかの醸造所で作られている」という事実については決して口にせず、だんまりを決め込むのです。 こういうことは特段目新しいことでもありません。 広く一般に名前を認知されたビールは長年似非醸造会社によって販売されているのです。
しかし、ここ数年の状況は更に深刻です。 今までにないレベルにまで広がりを見せるメディアを通して消費者は陣質から遠ざけられているのです。 これは消費者に対する詐欺だと認識されるべきで、消費者を守るとされている団体のターゲットとなるべきなのだと考えます。
「専門性の高い醸造という行為の否定」
我々が一番ショックなことの一つはこういった人々が正に”クラフト”という概念自体を否定しにかかっているということです。 彼らにしてみれば”クラフト”なんてものは全く意味を持たなくなってしまうのです。 彼らの生きる世界では伝統的で真っ当な意味での醸造家は全くもって不要です。 真っ当な醸造家は醸造所でビールを作ってくれるエキスパートとしてちゃんと(外注先に)存在する一方で、件の企業にはセールスマンでないふりをしているセールスマンがいるのですから。 思想があり、正真正銘腕があって自分でビール醸造がちゃんとできる、引き出しを上手に操る職人やその創造性豊かな精神にはこのシナリオにおいては居場所が全くありません。 対照的に、似非醸造家は腹黒さは隠しつつマーケットのトレンドを読み、もっと楽に商品を売ってより多くの利益を上げようとします。 要するに「マーケティング」という極めてシンプルな一言にまとめられるわけです。

「技術や知識は保護されず」
上記の動きはベルギービールとその評判にとって大きな脅威です。 ボトルの中身であるビールは地球上のどこかにいる醸造のプロによって作られたものであり、セールスマンがばっちりマーケティングした「なりすまし」のものですから、ラベルに印刷された「ベルギー産」という言葉はいつしか全く意味を持たなくなってしまうでしょう。 本当の醸造家は規模の差は関係なく、危機にさらされています。 ワインの世界でこういう事態が起これば、怒りや反発の大きな流れを見ることになったはずなのですが・・・残念です。 ワインよりもこの問題を難しくしているビールというものはベルギーにおいてそんな運動をするほどの価値がないと思われていると結論付けて良いのでしょうか?
此の点において、いわゆる「ビールパラダイス」(意訳:世界中でクラフトビールが流行し、様々なビールが飲める最近の状況)というものは醸造家の高い専門性を保護することなど絶対になく、醸造とは何か?ということにも関わらないと我々は理解しています。 だから、我々は醸造家という専門性の高い職を保護する新しい法律を求めて政治家や議会に呼びかけをしています。 押さえておくべき大事な点の一つは透明性確保の義務化です。 具体的なものとしては、はっきりと目で見て分るようにビールのラベルにどこで実際につくられたものかを明示することを求めています。 また、自社製品を醸造する設備を独自に持ち、それで全商品を製造する企業だけが「醸造所」という名称を使うことが許されるべきです。
最近ではビールはとても流行していますし、そこに不平を言うつもりはありません。 しかし、コインの裏側のように一つの事象には別の側面もあります。多くのペテン師がクラフトビール事業がうまい話だと気付き始め、人の良い一般の方々を騙して搾取の対象としています。 醸造家の仕事というものは世界で一番素晴らしいものですが、様々な技術を求められるきついものでもあります。 ユネスコ世界遺産のリストにベルギーのビール文化を挙げようと最近提案されたことは非常に素晴らしアイディアですが、真っ当な醸造会社のビールがペテン師のものと区別され、ちゃんと保護されない限り実現は程遠い。 「誰でも醸造家のふりは出来るし、市場にビールを出すことが出来る」というメッセージを出してしまうことは消費者への裏切りだけではなく、数世紀に渡って我々に受け継がれてきた伝統や文化、そして知識への冒涜でもあるのです。

この文章ではミッケラーや昔のストライセのような「設備は持たないが、他所の設備を借りて自分で醸造している醸造家」についての言及はありません。あくまでも「マーケティング主体の、醸造家のいないビール会社」への批判です。日本とは状況が異なりますが、今日のシーンを考えると非常に重要な論点です。 是非多くの方にお考え頂きたいと思います。